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【今年で124歳】横須賀の象徴「記念艦三笠」ってどんな船?【船マニアが徹底解説!】

横須賀

猿島航路が発着する三笠ターミナルのすぐ横で圧倒的な存在感を放つ灰色の船、「記念艦 三笠」
所在地の「三笠公園」や「三笠ビル商店街」など、その名を借りた場所は市内にも数多く、軍港横須賀の象徴と言っても過言ではないでしょう。

そして11月8日は「三笠」の誕生日!なんと今年で124歳を迎えました。

日本近代史の貴重な生き証人、「記念艦三笠」の魅力を、この機会にたっぷりとお伝えします!

<INDEX>

・「三笠」ってどんな船?一隻の戦艦が歩んだ歴史
・貴重な歴史遺産に乗艦!歴戦の”戦艦”を感じてみよう
・提督の仕事場見学!東郷司令長官の足取りを辿る
・歴史の生き証人「三笠」が今に伝えるものとは?


「三笠」ってどんな船?一隻の戦艦が歩んだ歴史

「三笠」は日本海軍の黎明期を支えた軍艦。明治時代、まだ大型軍艦を建造できなかった日本がイギリスに発注した戦艦です。

提供:三笠保存会

イギリスの造船所で1900年11月8日に進水した三笠。
工事を完了して日本に引き渡されたのはそれから2年後。スエズ運河を経由した2ヶ月以上の大航海を経て、ここ横須賀の地で出迎えられました。

日露戦争、シベリア出兵など、日本の歴史に残る数多くの戦いに参加した戦艦三笠ですが、なかでも最も有名で、最大の武勲を挙げたのが「日本海海戦」
ロシアのバルチック艦隊を迎え撃つべく日本海軍が総力をあげて編成した連合艦隊の旗艦をつとめ、かの有名な丁字戦法「東郷ターン」の先頭で戦いました。
NHKで現在再放送中のドラマ「坂の上の雲」にて、その勇姿をご存知の方も多いのではないでしょうか?

戦艦三笠は世界で唯一現存する前弩級戦艦として、また同じく日本海海戦に参加したロシア海軍防護巡洋艦アヴローラ(オーロラ)と並ぶ世界最古級の鋼鉄艦として、文化財や産業遺産など様々な面で貴重な存在なのです。


貴重な歴史遺産に乗艦!歴戦の”戦艦”を感じてみよう

乗艦するとまず目の前に現れるのが、大迫力の「主砲塔」

直径30センチ、重量400kgの砲弾を10km先まで飛ばすことができた、当時世界最大級の艦砲です。
この中で40人の水兵が大砲を操作していました。

戦艦として最大の武器であり、最後の切り札でもある主砲。
どんな攻撃を受けても大丈夫なように、約35センチ(14インチ)という途方もない厚さの装甲によって守られています。

艦内にある金庫のような分厚い扉では、この装甲板の断面を見ることができます。

成人男性の筆者の手と比較しても、この分厚さ。もはや装甲板というより鉄塊です。

船の側面には速射砲がずらりと並んでいます。
この大砲、見学者も当時と同じように向きを操作して変えられるのです!
模造砲ではありますがとても精巧に作られていて、当時とほとんど変わらない雰囲気です。
ぜひ水兵さんになりきって、日本海海戦を体感してみませんか?

戦う船である軍艦は、たくさんの装備や物資がひしめき合っていて乗組員のために使えるスペースはわずか。
戦艦三笠には900人の乗組員が乗艦していましたが、そのうち個室を持つことができたのは司令長官以下約30名の上級士官のみでした。
ではその他の水兵さんはどこで寝るのでしょうか…?
その答えは天井の鉄骨に隠されています。

艦内の天井に見える鉄骨をよく見ると、あちこちにフックが発見できます。
これはハンモックの両端を引っ掛けるためのフック。
水兵さんたちはこのハンモックで毎日寝泊まりしていたのです!
戦闘に特化した船である戦艦三笠では、士官と一部の乗組員以外は食事や睡眠まで持ち場の近くで済ませていました。


先ほど紹介した速射砲の操作を担当する水兵さんは、なんと食事も寝床も屋外、さらに大砲の目の前!
戦艦三笠の戦闘力を支えた屈強な海の男たちの寝床、ぜひ探してみてください。

三笠は戦闘艦なので、敵の攻撃で壊れることが当たり前。
操舵室や司令塔などを収めた艦の中枢「艦橋」にいたるまで、前後に2つ設置されています。

当時の海軍艦艇では、戦闘が発生した際には司令官は厚い装甲で守られた安全な司令塔から指揮を行うのが一般的でした。
ところが、日本海海戦で東郷司令長官は艦橋にある吹き曝しのデッキの上に留まり続け、直接戦闘指揮を取りました。

提供:三笠保存会

日本海海戦の逸話といえばZ旗」の信号が有名ですが、三笠乗組員にとっては司令長官が自ら最前線に立つという勇敢な姿勢を見せたこともおおいに士気の高揚に繋がったことでしょう。


提督の仕事場見学!東郷司令長官の足取りを辿る

戦艦三笠いえば、歴史に名高い日本海海戦。連合艦隊司令長官 東郷平八郎大将の大胆な戦法、敵前大回頭と丁字戦法による劇的な完全勝利は世界各国に衝撃を与え、「Admiral Togo」は世界の海軍軍人で知らない者はいないほどの英雄となりました。
そんな東郷提督が直々に乗艦し、艦隊の指揮を執ったのがこの戦艦三笠。
記念艦三笠では、なんと長官室などの中に入ることができます。東郷司令長官が歩いたその場所を、実際に自分の足で体験してみましょう!

三笠の数少ない個室の一つである司令長官寝室は、東郷司令長官も使用したベッドルーム。
船が揺れても落ちないように、背の低い壁がついた箱型のベッドになっています。
下のスペースを引き出しにして有効活用しているのも、空間が限られている船らしい工夫です。

そして三笠の最も後ろに位置する2区画は「提督の仕事場」、長官室と長官公室。
「長官公室」は、連合艦隊旗艦としての中枢。
東郷平八郎司令長官秋山真之作戦主任参謀をはじめとする連合艦隊幹部が会合し、作戦会議や来賓の応接に使われました。
部屋の中央にあるマホガニーでできた大きなテーブルは、三笠の竣工当時から残る大変貴重なもの。
連合艦隊旗艦として108隻の軍艦を指揮し、日本海海戦を勝利に導いた頭脳は、まさにこの1室、このテーブルに集結していたのです!

艦の最も後ろに位置する長官室は、東郷司令長官の執務室として使われた部屋。
実際に東郷提督が海軍で使用していた執務机や、明治天皇の御真影など貴重な品々が並びます。
屋外のハンモックで就寝し、大砲の前で食事をしていた水兵さんがほとんどの艦内において、この優雅で上品な内装。
日本海軍の顔、頭脳として「士官」という人間に期待された仕事の重大さ、責任の重さを感じられます。

明治期に造られた前弩級戦艦ならではのスターンウォーク(船尾テラス)も見逃せません。
艦の最後方に士官室があるのは、帆船の構造を踏襲した古い軍艦特有の設計。貴重な姿です。

優雅で開放感あるベランダから、東郷司令長官と同じ目線で海を眺めてみませんか?


歴史の生き証人「三笠」が今に伝えるものとは?

三笠は世界に唯一残る前弩級戦艦として貴重な軍艦ですが、三笠が多くの人に愛され、遺されてきたのはただ「貴重な船だから」というだけではありません。
日本の近代化は、国民一人ひとりによる経済の力、そして志ある人々のリーダーシップを結集することで成し遂げられました。
日本という国が挙国一致で急成長を果たし、国難を乗り越えた、その象徴こそが「戦艦三笠」なのです。

日本海海戦の勝利も、ただ東郷司令長官の作戦指揮だけによるものではありません。
当時の日本海軍は、砲弾の火薬や無線技術といったあらゆる分野で世界の最先端をゆく装備を研究・導入していました。
さらに、それを運用する勇敢で勤勉な水兵、新しい意見を切り捨てない柔軟な体制という優秀な人材が組み合わさったからこそ、日露戦争という大局を制することができたのです。

「技術の力」と「人の力」、この二つの力に支えられて日本は発展し、生き残ってきました。
明治という時代から残る戦艦を借りて、日本が脈々と受け継いできたこの伝統を後世に伝えることが、「記念艦三笠」の大きな役割なのです。

今回の取材で案内してくださった三笠保存会の福原さんは、このように語ってくれました。

甲板から海を見てみてください。
たくさんの自動車が見えます。あそこでは、海外へ輸出される自動車の積み込みが行われているんです。
今も昔も、自動車産業といえばその国の技術と国力の結晶です。
120年前の日本が国力、技術力を結集した「戦艦三笠」から、現代でも世界の最先端をゆく日本車の輸出が見える。
こうして日本の伝統と技術力が受け継がれている姿を見て、
「日本もまだまだ捨てた国ではないんだな」
と感じてもらえるのならば、それこそが「戦艦三笠という艦を保存していく意義」なんです。


猿島航路や三笠公園から堂々とした姿を見ることができる「記念艦三笠」

戦艦として綺麗な姿に復元され、当時の軍艦の様子を肌で感じることができる貴重な技術遺産である一方で、日本という国や軍港横須賀が歩んできた歴史を感じ、学ぶことができる場でもあります。

現在、三笠は約4年にわたる大修繕の真っ最中。
観覧できるエリアに一部制限がありますが、12月からは工事中だった「艦橋・艦首エリア」が綺麗に整備されて再び自由に見学できるようになりました!

記念艦三笠では、運営する「三笠保存会」の解説スタッフが常時艦内で解説を行っています。
保存会スタッフは元海上自衛官の方も多く、まさに海軍と船のスペシャリスト!
戦艦三笠のこと、船のこと、海軍のことなど、色々な質問に答えてくれます。
何か気になることがあったら、ぜひ声をかけてみてください。きっと戦艦三笠を何倍も楽しむことができるでしょう!

明治時代に世界の最先端技術として生まれた軍艦の姿と、日本が歩んだ歴史を伝える戦艦三笠。
誕生日を迎えたこの機会に、その魅力とメッセージを体感してみませんか?


※記念艦三笠は現在修繕工事中のため、観覧可能エリアは随時変化する可能性があります。
※本記事の情報は2024年10月29日現在のものです。


取材協力:三笠保存会

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